特別編1−3

 俺の名前はソリッド=スネーク、今の俺はもう興奮しすぎてわけがわからなくなっている状態だ。性欲を持て余す。
 俺と俺の彼女(周りの奴らは妄想は脳内に留めておけなどと戯言を言うが断じて違う)のEVAちゃんは廃墟と化していたハンバーガーショップ、幕怒奈留怒のDRAPA本店で奇妙なピエロから逃走劇を繰り広げている。他の奴らは皆、ピエロに食われてしまった。もうここにいることはできない。
 俺とEVAちゃんはここの出入り口に向かって走っている。だが後ろからは奴がまるで俺達を追い回すのを楽しむかのようにゆっくりと歩いてきている。出入り口にたどり着いてドアを開けようとするが開かない! 俺は転がっていた鉄を窓ガラスに叩きつけて割り、先にEVAちゃんと先に逃がした。その間にピエロはすぐ傍まで追いついていた。


 ここまできたら、戦うしかない。俺の得意とする柔道で!


 俺は奴に突撃していった。奴は不気味な笑みを浮かべている。本当に怖い。だがここで奴を恐れていては何も解決しない。俺は勇気を振り絞った。まず手始めに奴の後ろに回りこんで首に手刀を打ち込んだ。これが見事に決まり、奴はよろめいた。この隙を逃すわけにはいかない! 俺はすかさず奴を投げ倒し、ミゾオチに重い一撃を入れた。奴は口から泡を吹いて気絶した。
 勝った……! 俺は勝ったんだ! そんな勝利の余韻に浸りながら、俺は出口を目指す。
 出入り口に着き、俺は扉を開けようとした。今度は何故かすんなりと扉が開いた。外ではEVAちゃんが無免許運転の準備を終えて待機していた。
「行きましょ」
「ああ」
 俺は車に乗り込もうとしたその時だった。後ろから何かを思い切り叩くような音が聞こえてきた。出入り口が揺れている。そして次の瞬間、出入り口の扉が勢いよく吹き飛んだ。中から出てきたのはさっきのピエロだ。しかし恐ろしい変貌を遂げている。腕は丸太のように太く、体はボ○=サップのようにごつい、しかしそれでも顔は全く変わっていない。さっきよりも数段恐ろしくなって、奴は帰ってきた。奴は俺たちの方に向かって一歩一歩踏みしめてきた!
「失敗よ! さあつかまって!」
 そう言って彼女は道をそれて林の中へ入っていった。彼女の運転はものすごく荒い。……ん? 運転が荒い、それはすなわち興奮している。そして林の中……。



 性欲を持て余す。


 だが俺のそんな純粋な望みを奴は打ち砕いた。ものすごいスピードで追いかけてくる。奴は林の木々を俺たちの方に蹴り飛ばしてくる! こんなのを喰らったら一撃でお陀仏だ! 奴は本当にこの世の生き物なのだろうか、それすらも疑問だ。
 そのうちにものすごい太い大木が俺たちの目の前に現れた。何故かは知らないが俺は敗北の気分を味わった。俺たちはそれを避けて先を急ぐ。すると奴はさっきの大木を何とか蹴り飛ばそうと必死に大木を蹴っている。
「しつこいわね!」
「あの装甲にはRPGすら歯が立たない!」
「つり橋へ向かいましょう!」
「つり橋!? 君が腰を抜かした!?」
「そうよ! 奴をそこまでおびき出して……」
「つり橋ごと落とすということか! いいだろう!」
「つり橋はこの向こう。林の中をつっきるわよ! いい?」
 林の中をそのまま!? そんなにしてまで俺と……! 俺は興奮して言った。
「飛ばせ! だしちゃ……、追いつかれたら終わりだ!」
 つい一八歳未満お断りの言葉を言ってしまうところだった。だが後ろから変な音が聞こえてきた。ピエロが車の後部を握りつぶそうとしていた。くそ! こいつには物理的な攻撃はもはやほとんど意味がない! ならば……、視覚で潰してくれるわ! 
 俺は下の着ている物を脱いで車の中に捨てた。そこには見事なRPGが存在していた。ピエロは唖然とした表情を浮かべている。こいつを喰らったらライフの四分の三は削られるぞ?
「EVA、運転は任せた」
「本と……」
 彼女は俺のRPG、またの名をスティンガーを見てあんぐりしている。
「ああ、信じている」
 俺はピエロの方を向いて力強く言った。
「そのかわり、攻撃は俺にまかせ……」
 俺は驚きを隠せなかった。ピエロが「いただきます」という表情を浮かべながら俺のRPGに向かってきていた! 俺は思わずRPGを横になぎ払った。それはピエロの横顔に直撃し、奴は吹き飛んだ。だがピエロは嬉しそうな顔をしている。実に気味が悪い!俺たちは作戦を実行するために、林の中を突き進んでいった。